高校生の卓巳(永山絢斗)は友達の付き合いで行ったイベントで“あんず”と名乗る里美(田畑智子)と知り合い、アニメキャラクターのコスプレをして情事に耽るようになるが、その写真や動画を何者かにばら撒かれてしまう。その裏には、里美は姑から不妊治療や体外受精を強要されている主婦である事、そして、彼女の情事を知った夫がばら撒いた事実がそこにはあった。彼ら二人を中心に、助産師として様々な形の命の誕生を見守っている卓巳の母(原田美枝子)、痴呆症の祖母と団地で暮らし、コンビニでバイトしながら極貧の生活に耐える卓巳の親友・福田(窪田正孝)……。それぞれの人物の抱える苦悩と想いがリンクして、やがて未来へ向かう一筋の光が見えるラストに収束していく…。
本作は、2011年本屋大賞2位、第24回山本周五郎賞受賞し、話題をさらった窪美澄の『ふがいない僕は空を見た』(新潮社刊)の映画化である。そして、監督は、日本映画監督協会新人賞を受賞した2008年の『百万円と苦虫女』や同年の『俺たちに明日はないッス』で青春時代の葛藤を鮮やかに描いた気鋭・タナダユキ監督。
窪美澄が描いた人々の行き場のない想いが溢れた世界を、タナダユキ監督ならではの映像美で、観る者全ての胸に刺さる作品となっている。